同人グッズって著作権的にアウト?セーフ?

「同人グッズを作ってみたいが、著作権を侵害する可能性があると聞いてとまどっている」「自分で描いたファンアートなら、同人グッズを作っても問題ない?」

このような疑問や不安を抱いている方はいませんか? 同人グッズを作る際は、著作権について知っておく必要があります。

何も知らずにグッズを作り、ECサイトやイベントで販売するとトラブルが発生する恐れもあるでしょう。

本記事では、著作権の概要や同人グッズを作る際に知っておくべきルールや注意点を紹介します。

著作権とはどのような権利?

著作権とは、自分が創作した著作物を無許可で他人に使われない権利です

具体的には、以下のような権利が挙げられます。

  • 許可なく複製されて販売されない権利:海賊版の制作・販売
  • 許可なくインターネット上にアップロードされない権利:違法漫画サイトなど
  • 許可なく第三者に利用されない権利:著作物の無断使用など

私たちの周りにはたくさんの創作物があります。

アニメや漫画のキャラクターだけでなく、小説・映画・ドラマ・音楽なども原則として著作者に無断で使用することはできません。

著作権を侵害するとどうなる?

著作権を侵害してしまうと、10年以下の懲役、または1000万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられます。

引用:e-Govポータル

著作者は自分の著作物を利用する際に条件を付けたり、利用を禁じたりする権限を持ちます。

他人の著作物を利用したい場合は、著作者に利用目的を告げて許可を得てください。

また、著作者が著作物使用に関する条件を設けている場合は、それを守る義務があります。

一定の費用が必要な場合もあれば、クレジットを入れるだけで利用できる場合もあります。

なお、著作権は著作物を創作した時点で発生するため、著作者が何か手続きをする必要はありません。

また、著作権は国際的な制度です。外国でも著作物を自由に使うことはできません。

ここからは著作権侵害が発生するケースとしないケースを紹介します。

著作権侵害が発生しないケース

他人の著作物であっても個人的に楽しむために利用するには問題ありません

また、著作物であることを名言したうえで、自作のイラストをネットで公開しても著作権侵害にはあたりません。

このほか、明らかなパロディであることがわかるもの、ルールを守った引用。公的に使用する場合なども著作権侵害にはあたりません。

著作権が発生するケース

無断で著作物を利用すると著作権侵害となる可能性があるのは、以下のようなケースです。

  • 商業的な目的での他人の作品を販売や配布する場合
  • 著作権のある映像や音楽を自作に利用する場合
  • 公式ロゴやブランド名を使用する場合
  • 原作の複製物を製作・販売する場合

たとえば、『マンガの表紙やアニメのワンシーンなどをそのままプリントしたTシャツを販売した』『公式のロゴやブランド名をそのまま利用して同人誌や同人グッズを作成販売した』などが該当します。

また、ポスターや原画を複製して販売したり、小説や漫画をコピーして製本、販売したりした場合も、著作権侵害になります。

2021年には、著作権があるアニメのキャラクターをケーキの上に複製して販売した人物が、東京地検に書類送検されました。

アニメキャラクターをケーキに無断複製販売、著作権法違反で摘発 | 著作権侵害事件 | ACCS

また、自分の映像作品に著作権のある楽曲をBGMに利用した場合やイラストの背景に著作権のある絵画や写真を利用した場合は、著作権侵害に該当する可能性があります。

著作権侵害には親告罪と非親告罪がある

著作権侵害には、親告罪と非親告罪の2つに分類されます。

親告罪とは、著作権を持つ人が訴えないと警察や検察の捜査が行われず、刑事事件としてあつかわれない罪です。

つまり、著作権が侵害されたことを第三者が気づいても、著作者が「不問にします」といえば罪になりません。

著作権侵害はもともと親告罪でした。

しかし、2018年12月より以下のような一部の著作権侵害行為が非親告罪になりました。

  • 漫画や小説の海賊版を作成して販売したりネット上で公開したりして著作者の利益を損なった
  • 映画の海賊版をネット上で公開して著作者の利益を損なった

映画館では録音や録画の防止を呼びかけるCMが放送されますが、これは上映中の映画がインターネット上で不正に公開されるのを防ぐためです。

同人グッズで著作権が意識される2つの理由

同人誌即売会やインターネット上での小規模頒布において、同人グッズは以下のような理由で同人誌より著作権が強く意識されます。

  • 公式グッズと誤認させる商品ができる可能性がある
  • 肖像権や意匠権なども侵害する可能性がある

同人グッズの作成を考えている方は、著作権侵害を予防するためにもぜひ参考にしてください。

同人グッズで著作権が意識される理由1.
公式グッズと誤認させる商品ができる可能性がある

たとえば、同人誌は創造性が高く、公式とまったく同じものができるケースはほとんどありません。

そのため、オリジナルの漫画や小説が得るはずだった利益を損ねる可能性も少ないと考えられています。

一方、同人グッズは細かな違いはあっても、公式と酷似したデザインで作成してしまう可能性もあります。

公式グッズと間違えやすい同人グッズを安価で販売した場合、公式が本来得るはずの利益を損害するケースもあります。

この場合、非親告罪で刑事事件になる恐れもあるでしょう。

同人グッズで著作権が意識される理由2.
肖像権や意匠権なども侵害する可能性がある

同人グッズは肖像権や意匠権など、著作権以外の知的財産権も侵害する可能性が高いと考えられます。

※肖像権とは顔や容姿を勝手に撮影されない権利、意匠権とは製品のデザインを独占できる権利です。

たとえば、自分で描いた漫画やアニメのキャラクターを自分で撮影した写真と組み合わせてグッズを作ったとします。

写真に人物が映っていれば肖像権を侵害する恐れがあります。また、意匠登録されている製品をキャラクターに持たせた場合は、意匠権を侵害する可能性もあるでしょう。

それに加えて、似顔絵でも肖像侵害が認められるケースもあります。たとえば、アイドルや俳優の似顔絵で同人グッズを作成・販売すると描き方によっては肖像権の侵害で訴えられる可能性もあります。

自分で楽しむために少数のグッズを作るならば問題ありません。

しかし、同人誌即売会やネット通販で同人グッズを販売するならば、著作権だけでなく意匠権、肖像権などの知的財産権まで意識する必要があることを覚えておきましょう。

同人グッズを作るときに確認しておく5つのポイント

同人グッズは、ルールを守れば個人で作成して同人誌即売会やインターネット経由で頒布できます。

ここでは、同人グッズを作成して同人誌即売会などで頒布したい場合、確認するポイントを紹介します。

  • 公式が定めた著作権に関するガイドライン
  • 公式グッズに類似していないか
  • 公序良俗に違反していないか
  • 著作権があるロゴやマークなどを使用していないか
  • 刺激や嫌悪感が強すぎないか

同人グッズを作るときに確認しておくポイント1.
公式が定めた著作権に関するガイドライン

近年は、アニメやゲームを制作する会社が二次創作に理解を示し、「この条件を満たせば同人グッズの作成可能」とルールを定めているところもあります。

一例を挙げると、ニトロプラスオンラインでは、「非営利的な二次創作活動におけるガイドライン」として以下の条件で同人グッズの作成を許可しています。

  1. 創作性があること:公式絵のトレース・複製・簡易的なデザイン追加のみは不可
  2. 直接販売であること:委託販売やオークションなどで継続的な販売は不可
  3. 販売数量の総累計数が200個以内であること:種類、内容、契約期間は問わない
  4. 売上予定額が10万円以下であること
  5. その他、絶対的禁止事項に該当しないこと

参照「ニトロプラス/ニトロオリジン/ニトロキラル作品の著作物利用について

5番目の「絶対的禁止事項に該当しないこと」には、キャラクターのイメージを損なわないこと、公序良俗に反しないことなどが該当します。

ガイドラインが定められている場合は、認められる範囲でグッズを作成すれば著作権侵害にはあたりません。

同人グッズを作るときに確認しておくポイント2.
公式グッズに類似していないか

公式グッズに類似した同人グッズは、企業の利益を損ねる可能性があります。

第三者が見て「公式から発売されているグッズ」と誤解しそうな製品の作成はやめておきましょう。

また、漫画やアニメのキャラクターが愛用している日用品や文房具、アクセサリーなどは、公式がグッズ化する可能性があるため、酷似したデザインでの同人グッズ作成はおすすめできません。

このほか、「つままれストラップ」や「もちぬい」など特長的なグッズのデザインをまねた同人グッズも企業の利益を損ねると判断される可能性があるので、注意が必要です。

なお、公式グッズのぬいぐるみ用の「オリジナルの衣類」は、オリジナルとまったく同じ商品ではない限り黙認されるケースが一般的です。

ただし、ぬいぐるみの服もガイドラインで許可していない場合は作成してはいけません。

なお、同人誌即売会を主催している「赤ブーブー通信社」では、公式のグッズの展示が主流となるようなディスプレイも禁止しています。

たとえば、公式より販売されているぬいぐるみをたくさん卓上に展示したうえで、「オリジナルの私服を頒布します」といったやり方は注意を受けます。

同人グッズを作るときに確認しておくポイント3.
公序良俗に違反していないか

性的であったり特定の属性を貶めたりしている同人グッズは作成できません。

同人誌即売会では、成人指定のコミックスや小説が販売されています。

同人グッズも同様に考えている方もいるかもしれませんが、本はページを開かない限り、中に何が書いてあるかは判別できません。

一方、グッズはダイレクトに目に入る可能性が高い傾向があります。

性的であったり、差別に肯定的だったりするグッズを作成するとキャラクターのイメージも損なわれる可能性もあるので、注意してください。

著作者によってはキャラクターの衣服をはじめとするデザインに指定があります。指定がある場合は、必ず守ってください。

同人グッズを作るときに確認しておくポイント4.
著作権があるロゴやマークなどを使用していないか

企業のロゴやマーク、服のデザインなどは商標登録や意匠登録が行われているものも多く、無断で利用するとグッズの販売差し止め、回収、損害賠償が請求される可能性があります。 一例をあげると、「CHANEL(シャネル)」や「GUCCI(グッチ)」などファッションブランドのロゴです。

キャラクターに特定のブランドの服を着せたい、バッグを持たせたいといった方もいると思いますが、権利を侵害する可能性があるので注意してください。

なお、アニメや漫画に登場した服やアイテムにも商標権が登録されている可能性があるため、オリジナルキャラクターに着せたり持たせたりする場合も注意が必要です。

同人グッズを作るときに確認しておくポイント5.
刺激や嫌悪感が強すぎないか

残虐的・猟奇的なデザインは、キャラクターのイメージを著しく損ねる恐れがあるため、同人グッズを作成する際は注意しましょう。

なお、原作のキャラクターが残虐性、猟奇性の高いものであっても、グッズ化する際は注意が必要です。

イベントによっては、性的なグッズだけでなく刺激や嫌悪感が強すぎるグッズは販売できないところもあります。

「どこからが残虐的、猟奇的なデザインなのか」は明確な決まりはありませんが、常識の範囲で判断してください。

同人グッズ制作を依頼するグッズメーカーのルール

同人グッズを作成するメーカーによっては、「性的だったり猟奇的なデザインのグッズは作成不可」「犯罪を助長するようなグッズは作成不可」「特定のキャラクターのグッズや同人誌は作成不可」といった独自のルールを設けているところもあります。

どのようなグッズが作成不可なのかは業者によって異なりますが、ウェブサイトのわかりやすいところに記してあるのが一般的です。

イラストだけでなく文字だけのグッズや同人誌も対象です。

「自分が作成したイラストやデザインでグッズを作成してもらえるか不安」といった場合は、依頼を検討している業者に確認してもらいましょう。

なお、フルグラフィックファクトリーでは、著作権の保護に対して下記のとおり、ルールを定めています。

  • アニメ・漫画のキャラクター・ロゴ
  • ブランドのロゴやマーク、キャラクター
  • 画像・イラストや写真
  • 楽曲で使用されている歌詞

これらを利用したい場合は、著作権保有者から使用許可を貰う必要があり、無断で使用すると著作権侵害となるので注意が必要です。

弊社ではこれらを用いた商品は許諾が下りていない場合は制作をお断りさせて頂いております。

二次創作にも著作権は発生する

二次創作は厳密にいえば違法です。しかし、日本では二次創作の同人誌や同人グッズがアニメや漫画の文化の発展に寄与していた事実もあります。

そのため、出版社、アニメ制作会社などの中には同人誌即売会で同人誌や同人グッズを販売したり、個人で行える範囲で通販したりすることをグレーゾーンとして黙認しています。

その一方で、二次創作にも著作権は発生します。

たとえば、誰かが作成した漫画やアニメのキャラクターにオリジナルの衣装を着せた同人グッズを無断で複製して販売するのは違法です。

また、同人誌をコピーして別のイベントで販売したり、インターネット上で公開したりするのも著作権侵害にあたります。

近年は外国の業者がイラスト投稿サイトから画像を流用し、勝手に同人グッズを作成・販売する犯罪も発生しています。

同人グッズを作成して同人誌即売会で販売する際には、物品の宣伝をすることもあるでしょう。 その際、転載ができないよう透かしを入れるなど対処することが大切です。

まとめ

近年は技術の進歩により、個人でも手軽に少数から好きなキャラクターのグッズを自作できるようになりました。また、同人誌即売会などで販売できる機会も増え続けています。

しかし、自分が作成した同人グッズで企業の利益を損なったり、キャラクターのイメージが悪化したりする恐れもあります。

同人グッズを作る際は、キャラクターの著作権を保有する会社や人物がガイドラインを発表していないか、まずは確認してください。

そのうえでルールを守って楽しく同人グッズを作成しましょう。