近年、同人イベントでは配布物によって年齢確認をすることが一般的になっています。
初めて同人イベントにサークルとして参加する方の中には、「どのような証明書を提示してもらって年齢確認をすればよいか」と悩んでいる方もいるでしょう。
本記事では、同人イベントで年齢確認に使える証明書の種類と、確認するポイントを解説します。同人イベントで頒布される本やグッズを求めて足を運ぶ方も、参考になるのでぜひ最後まで読んでみてください。
同人イベントでの作品配布に年齢確認が必要な理由
同人イベントでの作品配布に年齢確認が必要な理由は、成人向け(R18)の作品を18歳未満に配布しないためです。
同人誌即売会(イベント)では、主催者が成人向け作品を18歳未満に配布しないように通達しています。以下は、各イベントの成人向け作品の取り扱いに関する考え方です。
同人誌即売会に同人誌やグッズを頒布する側(サークル)で参加する方は、本やグッズを作成する前に確認しておきましょう。
大規模なイベント運営会社における成人向け作品に対する考え方は、以下の表の通りです。
イベント名 | 成人向け作品に対する考え |
コミックマーケット | ・「成年マーク」等をつけた場合には、あるいは、「成年マーク」をつけていない場合であっても、自主規制の対象になるものについては、18歳未満か判断がつきにくい場合には身分証等で年齢確認を行い、18歳未満には販売、頒布、閲覧等をさせない |
赤ブーブー通信社 | ・露骨な性器描写は刑法で禁じられており「修正対応」を必要とする
・R18 を判断するのは、原則発行主であるサークルであるが、閲覧等の制限は頒布者の責任 ・R18表記は、表紙への表記を強く推奨 ・18歳未満とわかる者にR18作品の閲覧・頒布を行わない ・18歳未満の者がR18 作品を制作・頒布しない |
スタジオYOU | ・18歳未満には、R18作品の販売・頒布・閲覧は禁止
・年齢の判断がつかない場合は、確証できる身分証等で18歳以上であることを確認した上で、販売、頒布、および閲覧の許可を行う ・「作者が18歳未満である」場合、R18指定作品の展示・販売は禁止 |
なお、成人向け(R18)作品とは性的な行為が主軸になっている作品だけではありません。「残虐性・暴力性の描写が激しい作品」「犯罪等、非社会的な行為を賞賛、誘導するような描写のある作品」も該当します。
ただし、どこからをR18とするかは作者の判断にゆだねられます。例えば、「性的な行為あったと話の流れからわかるが、直接的な描写は一切ない」といった場合は、全年齢向けの作品として発表する方もいます。
ちなみに同人イベントによっては、主催者が本のチェックをすることもあるため、見本誌の提出を求められたら応じましょう。チェック項目は主に「性器描写」や「残虐描写」です。
特に、性器を修正していない、もしくは修正をしていても不十分と判断された場合は、頒布を認められないので注意してください。グッズも同様です。本やグッズをイベントで頒布したい場合は、性器の修正をはじめとしてイベントで頒布する際に必要なルールを確認してから、作成を始めましょう。
同人イベントでの年齢確認に利用できる証明書
同人イベントでの年齢確認に利用できる証明書とは、姓名、生年月日が確認できるものです。
写真付きのものが最良ですが、保険証など写真がなしのものでも認められる場合があります。
なお、「スタジオYou」では、主催するイベントで身分証明書として認められる書類を以下のページに掲載しています。
年齢確認に利用できる証明書1.運転免許証
運転免許証は、年齢確認に利用できる最もポピュラーな証明書です。生年月日と顔写真が付いているので、正確な確認が可能です。
特に、普通自動車免許や大型二輪免許は満18歳以上しか取得できないため、これらの免許であることを確認できれば、生年月日を細かく確認する必要もありません。また、高校によっては免許取得を禁止している場合も多いです。
普通二輪車免許の場合は生年月日を確認しましょう。
年齢確認に利用できる証明書2.マイナンバーカード
マイナンバーカードも顔写真付きで生年月日が確認できるため、信頼性の高い証明書です。運転免許証を持っていない方は、マイナンバーカードか保険証を提示する方が多い傾向があります。
なお、マイナンバーカードはすべての年齢で取得できるため、生年月日の確認をしっかりと行いましょう。
年齢確認に利用できる証明書3.学生証
大学生・専門学校生の場合、顔写真付きの学生証が一般的なため、生年月日を確認する手段として利用可能です。なお、近年は高校でも顔写真つきの学生証のところもあります。
高校生でも18歳以上は成人です。
本やグッズを頒布するかどうかはサークルの判断に任せられるので、イベント当日までにどうするか考えておきましょう。
年齢確認に利用できる証明書4.同人イベント独自の証明書
赤ブーブー通信社では、年齢証明書として利用できる「イチハチID」を発行しています。b2カード会員は無料、会員以外は1,100円で発行が可能です。
イチハチIDは18歳以上しか発行されないので、細かく生年月日を確認する必要はありません。写真付きで信頼度も高い証明書です。
成人確認バンドは、スタジオYOUが発行する年齢確認アイテムです。同社が主催するイベント当日、スタジオYOUが参加者の年齢を確認し、18歳以上の方に配布します。バンドをつけていれば、改めて証明書を提示してもらう必要はありません。
スタジオYOU主催のイベントに参加する際は利用すると頒布がスムーズです。
なお、コミックマーケットでは独自の年齢確認アイテムは発行していません。各種証明書を利用して確認してください。
顔写真付きの身分証明書を見せてもらえない場合の対処法
購入側が顔写真付きの身分証明書を持っていない場合は、保険証をはじめとして写真はなくても、生年月日がわかる証明書を見せてもらいましょう。
満18歳以上でイベントに参加するような年齢ならば、生年月日を記した証明書を1枚も持っていないケースはほとんどありません。
顔写真あり、なしに関わらず身分証を提示してもらえない場合は、頒布を断ったほうがいいでしょう。一人に例外を認めてしまうと、他の購入者に対して公平性が保てなくなります。
身分証明書の提示については、事前にSNS等で「成人指定作品は頒布する際に身分証の提示を求めます」「身分証の提示ができない方には頒布できません」と告知しておくとスムーズです。
また、当日も卓上に「身分証明書を提示できない方には頒布できません」と提示しておくとサークルの姿勢を示せます。
同人イベントで年齢確認をしなかった場合の罰則はあるの?
同人イベントで年齢確認をせず、成人向けの作品を頒布しても特別な罰則はありません。
年齢の確認は義務ではないため、運営も配布に関しては「表現の自由」を理由に参加者の判断に任せています。
そのため、同人イベントでは成人向けの同人誌が多数頒布されています。
その一方で、イベントの参加に年齢制限はありません。ジャンルによっては未成年の参加者が多い場合もあるでしょう。
同人イベントで18歳未満に成人向けの同人誌を頒布した場合、イベント主催者から警告を受けたり、未成年の保護者から苦情を受ける等のトラブルが発生する可能性があります。
現在はSNSで良い評判も悪い評判も広がりやすいため「未成年に成人向け作品を頒布した」といったことも広まり、活動がしにくくなる恐れもあるでしょう。
大切なのは、同人誌やグッズを作成して頒布する参加者の姿勢です。
「自分たちは未成年に成人向け作品を頒布しない」意思を態度で示してください。
誤って未成年にR18作品を頒布してしまうとどうなる?
誤って未成年に成人向け作品を頒布した場合、罰則等はありません。運営から何らかの注意を受けることもないでしょう。
身分証で年齢を確認していても、誤って未成年に成人向けの作品を頒布してしまうケースもあります。特に、人気があるサークルにはたくさんの頒布希望者がやってくるため、チェックがおろそかになってしまいがちです。
また、成人した方に未成年が代理購入を依頼するケースもあります。頒布する側は、代理購入かどうか確認する方法はありません。
なお、青少年の健全な育成のために定められた「青少年健全育成条例」では、未成年に性的な画像を見せることを禁止していますが、あくまでも努力義務です。
しかし、前述したように「未成年に成人向けの作品を販売しない姿勢」を見せることが大切です。
一方、未成年が年齢を偽って成人向けの作品を頒布してもらった場合も、罪に問われることはありません。現在は同人誌はイベントだけでなく通信販売でも購入できます。18歳以上であるか確認されますが、厳密な確認はありません。
しかし、未成年が年齢を偽って成人向けの作品を頒布してもらい、そのことが判明した場合、同人誌を頒布したサークルは、信頼を失う可能性もあります。イベントに参加する人たち同士で活発に交流がある場合、短時間で情報が共有される場合もあるでしょう。
現在は、イベント前に同人誌の一部がイラスト投稿サイトにアップされるのが一般的であり、未成年でも閲覧できます。成人向けの本を頒布してほしくなる方もいるでしょう。
しかし、未成年に成人向けの作品を頒布したことがわかれば、好きなサークルの評判が落ち、活動がしにくくなる恐れもあります。
現在のように自由にさまざまな表現方法の同人誌やグッズをイベントで頒布し続けるためには、頒布する方、同人誌やグッズを求める方、双方の倫理が必要です。
同人イベントで年齢確認をスムーズに行うポイント
最後に同人誌即売会をはじめとする同人イベントで、年齢確認をスムーズに行うポイントを紹介します。特に、はじめて同人誌やグッズを頒布する側として参加する方は、参考にしてください。
年齢確認をスムーズに行うポイント1.
事前にR18作品を配布すると宣伝しておく
イベントで頒布する同人誌やグッズが完成したら、成人向けの表現があるかを公表しておきましょう。
成人向け作品、成人向けのグッズと明記しておけば、購入に身分証が必要だとわかってもらえます。何度も同人イベントに参加した方ならば、何も言わなくても身分証をもってきてくれるはずです。
なお、R18作品は「成人向け」などのマークを表紙につけておくと一目で購入に年齢制限があるとわかります。
年齢確認をスムーズに行うポイント2.
会計の際に年齢確認ができる書類の提示を求める
会計の際に年齢確認ができる証明書を求めるのが一般的です。
頒布希望者が多い「壁際サークル」の場合は、年齢を確認して同人誌やグッズを渡す方と、会計をする方の2人がかりで担当すると、スムーズに頒布できるでしょう。
年齢確認をスムーズに行うポイント3.
生年月日を指さしてもらうと楽
免許証やマイナンバーカードは、生年月日を指さしてもらうと確認が簡単です。なお、2025年だと、2006年までの生まれは成人済みです。2007年は誕生月に注意してください。例えば、イベントが7月に開催される場合、2007年7月のイベント当日までに生まれた方が18歳以上となります。
また、高校生に成人向け作品を頒布するかどうかは意見が分かれています。
「4月1日時点で18歳以上かつ高校生不可」としているサークルもありますが、18歳を超えている方ならば条例的には問題ありません。
頒布する作品も考慮に入れて、検討してください。
年齢確認をスムーズに行うポイント4.
早見表を用意しておく
以下のような年齢早見表を用意しておくと判断が楽です。2025年の場合、2008年生まれまでは未成年です。2006年生まれならば高校も卒業しているため、頒布に問題はありません。
西暦 | 和暦 | 年齢 |
2002年 | 平成14年 | 23歳 |
2003年 | 平成15年 | 22歳 |
2004年 | 平成16年 | 21歳 |
2005年 | 平成17年 | 20歳 |
2006年 | 平成18年 | 19歳 |
2007年 | 平成19年 | 18歳 |
同人イベントでR18作品を販売する際の注意点
同人イベントで成人向け作品を販売する際は、以下の点に注意しましょう。
- 漫画の場合は、イベントのルールに基づいて性器等の修正を行う
- 二次創作のガイドラインがある場合は、禁止している描写は行わない
- 成人向け作品であることを明記する
- グッズは、見本に性的なものが映りこまないように工夫する
特に、グッズは同人誌よりダイレクトに性的、残虐的な表現が目に入ります。
頒布する製品を宣伝したい場合は、ぼかしを入れる、性的な部分を隠すなどして未成年の目に触れないようにしましょう。
また、性的・残虐的な表現が人目に触れにくいよう、成人向けの作品を頒布してもらう際は、不透明なバッグ等を持参しておくとより安心です。
それに加えて、サークル参加をしているならば、イベント中は離籍して無人になる際は、必ず成人向けの同人誌やグッズは人目に触れないよう布等をかけておきましょう。
なお、作品によっては成人向けの二次創作を一律禁止しているところもあります。ルールを破れば二次創作が一切禁止になる恐れもあります。
まとめ
本記事では、同人イベントで年齢確認をする方法や必要性を紹介しました。同人誌即売会を始めとするイベントでは、主催者が成人向け作品を18歳未満に配布しないように通達しています。
頒布しても罰則はありませんが、未成年が成人向けの同人誌やグッズを頒布してもらえると広く知られてしまうと、イベントに参加が難しくなったり、イベントの主催者が頒布方法をより厳しくする可能性もあるので注意が必要です。
また、成人向けの同人誌やグッズを頒布する際は、性器をはじめとして性的な部分を修正するなどの対応が必要です。これらのルールに違反した場合は頒布ができなくなるため、必ずルールをチェックしてから作品を作成しましょう。